高度不妊治療は、体外受精と顕微授精、広義には凍結胚移植を含めた治療をいいます。一般不妊治療では妊娠が難しいご夫婦の場合、高度不妊治療をお勧めすることになります。高度不妊治療は今や大変ポピュラーな治療法といえます。とくに顕微授精では男性不妊だけでなく、これまで原因不明とされてきた受精障害やピックアップ障害を、同時に解決する可能があります。また、着床改善や受精卵の安全性を高める技術も進んでいます。私たちは、高度不妊治療に挑戦する姿勢、治療をあきらめない姿勢を支えていきます。
高度生殖医療を勧められ、とまどいを感じるご夫婦は少なくありません。体外受精、顕微授精、新鮮胚、凍結胚など、聞きなれない言葉に不安を感じる方もおられることでしょう。
当院では説明会を開き、治療内容を詳しく説明しております。起こりうるリスクについても率直に解説し、医師に質問する時間も設定していますので、ぜひご参加ください。不妊治療は、あくまでも患者様が主役です。私たちは縁の下の力持ちになって、皆さんの挑戦を支えます。患者様にはあなたは孤独ではないこと、あなたを支える医療スタッフがいることを知っていただきたいと思います。
安易に高度不妊治療を勧めるものではありませんが、体外受精・顕微授精に挑戦すれば、妊娠が可能なご夫婦は多数おられます。象徴的なのが顕微授精です。軽症の男性不妊では人工授精が功を奏しますが、中等度、重症の方ではそうはいきません。しかし、顕微授精(ICSI)ではたった1匹の精子が存在すれば妊娠も夢ではありません。無精子症のため、以前は妊娠不可能とされていた方も、精巣精子による妊娠が可能となってきました。
さらに、これまで原因不明とされてきた不妊には、受精障害やピックアップ障害があることが解明され、最近は高度不妊治療を行うようになっています。高度不妊治療は日々進化し、恩恵を受けるご夫婦は益々多くなっています。
受精卵は初めたった1個の細胞ですが、2分割卵、4分割、8分割卵、桑実胚[そうじつはい](16分割)というように細胞分裂を繰り返し、自然妊娠では胚盤胞(はいばんほう)の段階で子宮内膜に着床します。では、高度不妊治療の場合も、胚盤胞を胚移植すると着床がうまくいくのではないでしょうか。その通りです。当院では、培養液や培養器の工夫が重ね、受精と発育のための環境を整える努力をしてきました。合わせて、顕微授精において、卵子の紡錘体(ぼうすいたい)を傷つけないオーサイトシステムを導入しています。発育のよい成熟した胚に育てることができると、子宮内膜への着床率は明らかに上昇します。
卵子の中には染色体(遺伝情報の集合体)が詰まった細胞質があり、そこには「紡錘体」があります。紡錘体の役割を簡潔に表現すると、「細胞が分裂する時、新しくできる細胞に染色体を移動させる装置」といえます。もし、紡錘体に傷がつくと、受精卵の染色体に影響するような不都合が起こりかねません。
「Oosight (オーサイト)システム」は、特殊なレンズをこれまでの顕微鏡に装着して、直径わずか0.025㎜の小さな紡錘体の位置を確認・観察できるシステムです。オーサイトシステムによって、これまで以上に卵子細胞質を保護しながら、顕微授精を行うことができるようになりました。
当院では2007年より本システムを導入し、紡錘体の位置を確認した安全なICSIを行った結果、採卵時に少数の卵子しか得られない場合でも、無事妊娠に成功する方がふえています。
高度生殖医療では、成熟卵子と精子の準備→体外受精または顕微授精による受精と受精卵の培養→胚(受精卵)の子宮内への移植までを、私たちが手助けします。その先は、受精卵が自力で子宮内膜に着床し、妊娠が成立するのを待ちます。
では、受精卵の着床を助けることができれば、着床率は高くなりそうです。そこで考案されたのが、アシステッド・ハッチング(孵化(ふか)補助)です。アシステッド・ハッチングは、胚移植の前に受精卵を囲む透明帯にあらかじめ穴を開けたり、薄く削って、着床を助ける技術です。透明帯が固いと着床がうまくいかない原因につながるといわれ、アシステッド・ハッチングは、着床が難しかった方に効果的な方法といえます。
最近、従来の酸に代わってレーザーを使う方法が開発され、当院では平成19年末よりレーザーによるアシステッド・ハッチングを導入しました。これまで以上の着床率上昇が期待されます。
高度生殖医療では、余剰胚といって、受精卵が余ることがあります。2008年以降、日本産科婦人科学会の会告に基づき、35歳未満の方の胚移植は原則1個となりました。多胎妊娠を防止するため重要な対策であり、当院でも厳守しています。しかし、同時に、余剰胚がふえます。余剰胚は次回の胚移植に備えて凍結保存しますが、この間は厳重に保護・管理しています。もちろん、卵子や精子、受精卵の取り違えなどが起こらないように、日本生殖医学会の会告に基づき、安全委員会を設置しています。
当院は、開院当初より不妊治療に取り組み、1990年6月、当院初の体外受精による赤ちゃん誕生以来、一組でも多くのご夫婦に赤ちゃんが授かることを祈念しつつ、実地医療に邁進してきました。不妊治療は日々進化しており、当院も常に最新の治療技術を会得し、患者様に提供できるように努力しております。これからも患者様の期待に沿えるように、日々の研鑽を欠かさない覚悟でおります。患者様の叱咤激励が私たちの明日へのエネルギー源です。ご意見、ご希望をお寄せくださるようにお願いいたします。
一般不妊治療・高度不妊治療は一部、不妊治療基礎知識から転載しております。
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