一般不妊治療・体外受精・顕微授精 西山産婦人科不妊治療センター

院長 西山幸江(生殖医療専門医・臨床遺伝専門医)
名誉院長 西山幸男(生殖医療専門医)

不妊症の検査

不妊症の検査

不妊症の検査

不妊検査の基礎知識

  • 女性は月経周期に合わせて検査を行います

検査項目は、妊娠・出産を担う女性のほうが種類も多く、時間もかかります。月経周期に合わせて検査を行うので、最低でも1~2か月かかります。これに対して、男性は通常、精液検査が基本となります。


  • 治療につながる検査があります

子宮卵管造影検査では、造影剤を注入する時に圧をかけるので、卵管の軽い狭窄や詰まりが治る場合があります。また、フーナーテストは性交後に子宮頸管や子宮腔に精子がどのぐらい進入しているかを調べる検査です。女性の排卵日に合わせて性交を持ってもらうと、タイミング法を兼ねるため、妊娠に結びつく場合があります。
このように、不妊検査は治療につながるのが大きな特徴です。


  • 基本検査の結果、精密検査を行う場合があります

男女ともに基本検査と精密検査があります。
男性の場合は、基本検査の精液検査で精液異常とわかり、原因として精索静脈瘤が疑われる場合には、泌尿器科で詳しい検査を受けるように勧められることが多くあります。
女性の場合は子宮内膜症を例に説明します。
基本検査では、症状を参考に超音波検査で子宮が腫れて大きくなっていないか、卵巣にチョコレート嚢胞(血液の塊)がないかなどを調べます。結果、子宮内膜症や子宮腺筋症が疑われると、精密検査として、血液検査(腫瘍マーカー125が高くなることがあります)の他、CT・MRI検査を行います。この段階で診断が確定しますが、念のために腹腔鏡検査を行う場合もあります。なお、腹腔鏡検査は治療を兼ねる場合があります。
子宮筋腫の場合も基本の超音波検査でほぼ診断がつきますが、精密検査としてCT・MRI検査などを行い、妊娠や流早産への影響を調べることがあります。


赤ちゃんを授かる第一歩は、検査を受けて不妊の原因を詳細に、的確に把握することです。 原因を確かめないまま治療を始めると、ご夫婦の貴重な時間やお金を浪費することにつながる心配があります。 患者様本位に不妊治療に携わる医療施設ほど、検査を重要視していることをご理解ください。


女性が受ける基本検査

当院が必須としている基本検査
  • 初診時に受ける検査
基礎体温チェック

基礎体温は起床直後、体を動かす前の体温です。自宅で測り、基礎体温表に記入して医師のチェックを受けます。
女性はホルモンの影響を受けて、体温が微妙に変化します。基礎体温を測ると、ホルモンの分泌状態、排卵の有無、排卵日、黄体機能不全の有無などがわかります。


★正常な基礎体温

ほぼ2週間の低温相とほぼ2週間の高温相がある場合が理想的排卵周期と考えられます。低温相と高温相の差が0.3℃以上あるのが正常です。必ずしも排卵日に体温が最低になるわけではありません。


★黄体機能不全

高温相が短縮していたり、低温相と高温相の温度差が小さかったり、高温相に温度の凹凸がみられる場合などは黄体機能不全が疑われます。



★無排卵周期症

低温相のみで高温相がみられないまま次の月経が始まるのが無排卵周期です。無排卵周期は卵巣の働きが低下していることを示し、時々、無排卵周期になる場合のほか、程度が高いと毎周期無排卵の場合があります。




おりものの検査

クラミジアやカンジダなどの感染の有無を調べるおりものの検査を行います。クラミジア感染症の検査には抗原検査と抗体検査があります。当院では初診時に、おりもの(腟分泌物)を採取して抗原検査を行います。抗原検査が陽性の場合は、検査時点でクラミジアが存在していることを意味します。



経腟超音波検査

腟内に細い検査用器具を挿入して、子宮や卵巣を観察します。経腟超音波検査は子宮筋腫、子宮内膜症、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)などの診断のほか、卵胞発育の観察、排卵日予測の卵胞計測など、さまざまな場面で必須の検査です。



内診

子宮や卵巣の大きさ、しこりや痛みの有無などを調べます。同時に子宮頸ガンを調べる頸部細胞診を行います。



感染症の検査(風疹・麻疹・肝炎など)

血液検査です。妊娠中または分娩時、産後などに赤ちゃんに感染のリスクがある感染症について、抗体(免疫)があるかどうかを調べます。

  • 月経周期に応じて受ける検査

【低温期】

血中ホルモン検査(月経の6日目前後)

血中ホルモン検査は、血液検査でFSH(卵胞刺激ホルモン)、LH(黄体化ホルモン)、テストステロン(男性ホルモン)、プロラクチン(乳汁産生ホルモン)、甲状腺ホルモンなど、排卵に関係するホルモンの分泌量を調べる検査です。血中ホルモン検査は月経周期に合わせて行います。



卵管疎通性検査(月経終了から排卵数日前)

卵管疎通性検査は卵管の通過性を調べる検査で、子宮卵管造影、通水検査、超音波下通水検査があります。X線撮影の子宮卵管造影をはじめ、どの検査も月経終了から排卵数日前までの「妊娠の可能性がない低温期」に行います。



★子宮卵管造影(HSG)

子宮頸管の入り口から造影剤を注入したうえで、X線撮影を行い、子宮・卵管の内部の状態を調べます。子宮奇形、子宮筋腫、卵管狭窄・閉鎖のほか、卵管采の癒着などがわかります。



  1. 正常な子宮腔
  2. 卵管膨大部まで抽出された像
  3. 卵管采から腹腔へ流失した造影剤

卵管采から流失すると卵管は通っているということになります。



★通水検査

通水検査では、抗生物質やステロイドホルモンを加えた生理食塩水を使用します。



★超音波下通水検査

気泡を含んだ溶液を用いて超音波下に通水検査を行うものです。これは、気泡を含んだ溶液が卵管を通ると超音波で白っぽく写ることを利用したものです。



【排卵期】

血中ホルモン検査

排卵の準備が整っているかどうかを知るために、E(卵胞ホルモン)、LH(黄体化ホルモン)の分泌量を調べます。フーナーテストのために排卵日を予測する目的でも行われます。



尿中ホルモン検査

排卵日を予測する目的で、尿検査でLHを調べます。



頸管粘液検査

排卵期の頸管粘液の量や性状を調べる検査です。頸管粘液は排卵期になると、精子が通過しやすいように粘度が低くなり、分泌量も増えます。量が少ない、粘度が高い場合には、精子が子宮の奥に進めない心配があります。



フーナーテスト

医師が排卵日を予測して性交日を指示し、翌日、頸管粘液中に進入した精子の数や活動性を調べます。結果は判定基準によって判断されます。フーナーテストの結果が不良の場合には、男性不妊および女性の抗精子抗体陽性が考えられます。


★フーナーテストの判定基準(運動精子/400倍視野当たり)

15個以上 有意に妊娠率が高い
10〜14個 妊娠は十分に期待できる
5〜9個
不可 4個以下 妊娠率は有意に低い


【高温期】

血中ホルモン検査(高温期開始5~8日目頃)

血液検査でE(卵胞ホルモン)、P(プロゲステロン)の分泌量を調べて、黄体機能不全の有無を調べます。



【月経周期に関係なく受けられる検査】

AMH検査

AMH(抗ミュラー管ホルモン)は、発育途中の卵胞から分泌されるホルモンです。血液検査でAMHの分泌量を調べます。卵巣内に残る卵胞数を測定することで、卵巣年齢と卵巣予備能(卵巣の働きや排卵する力など)を推定できます。
AMHの分泌量は女性の加齢とともに減少しますが、個人差があります。とくに35歳以上の女性では、生殖補助医療(ART)を急ぐほうがいいかなど、治療法を選ぶ際の助けになります。また、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の早期発見、排卵促進剤による卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の予防につながります。
AMH検査は月経周期の影響を受けにくく、いつでも検査できるメリットがあります。



抗精子抗体の検査

フーナーテストの結果が不良の場合に受ける血液検査です。抗精子抗体(夫の精子に対する抗体)がないかを調べます。抗精子抗体には、精子同士がお互いにくっついて塊を作ってしまう「精子凝集抗体」と、精子の運動を止めてしまう「不動化抗体」があり、どちらの場合も、精子は子宮の中に入れないため、不妊症の原因になります。

経腟超音波検査について●

超音波検査は体の内部に超音波を送り、跳ね返ってくる超音波を画像としてキャッチする検査法です。体内の様子は、テレビ画面のようなモニターに映し出されます。
産婦人科で使用される超音波検査には、検査用器具を腟内に挿入する経腟超音波検査と、おなかの表面に当てる経腹超音波検査がありますが、不妊検査ではほぼ100%、経腟超音波検査が使われます。経腟超音波検査は子宮や卵巣の近くまで器具が届くため、鮮明な画像と詳細な情報が得られるためです。
したがって、本HPに表記された「超音波検査」はすべて、「経腟超音波検査」を指しています。

血液検査で調べるホルモンの名前と働き●

基礎体温で排卵障害が疑われる場合には、血液検査を行い、 生殖に関係するホルモンを調べます。


ホルモンの名前 基準値
LH(Luteinizing Hormone/黄体化ホルモン) 2.6~8.6mIU/ml
脳下垂体から分泌され、排卵を起こすホルモンです。排卵間近になると急激に分泌量が増え、成熟した卵胞から卵子が出るように働きかけます。
FSH(Follicle Stimulating Hormone/卵胞刺激ホルモン) 5.4~11.8mIU/ml
脳下垂体から分泌され、卵胞を発育させます。
テストステロン(男性ホルモン) 0.11~0.47ng/ml
男性ホルモンの一種ですが、女性の場合は卵巣や副腎から分泌されます。分泌量が多すぎると排卵障害、ニキビ、多毛、肥満の原因になります。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の時に値が高くなり、診断の目安になります。
プロラクチン(PLR:乳汁産生ホルモン) 4.91~29.32ng/ml
脳下垂体から分泌され、乳腺を刺激して乳汁を作るホルモンです。排卵を抑える作用もあります。
エストラジオール(E:卵胞ホルモン) 77.9~188.7pg/ml
卵巣の卵胞から分泌されるホルモンで、子宮内膜を増殖させます。排卵期におりものが増えるのも、卵胞ホルモンが関係しています。
プロゲステロン(P:黄体ホルモン) 8.0~23.8ng/ml
排卵後に卵巣の黄体から分泌されるホルモンで、増殖した子宮内膜をさらに柔らかくして、受精卵が着床しやすいようにします。体温を高くする作用もあります。
AMH(抗ミュラー管ホルモン) *年齢別平均値を参考にします
発育途中の卵胞から分泌されるホルモンです。卵巣に残る原始卵胞の数を推定でき、卵巣予備能を知る目安になります。また、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の診断を助けます。

男性が受ける基本検査

男性の検査は必須です。女性の初診時でなくてもいいのですが、できるだけ早目に受けましょう。

  • 精液検査

精液検査では精子濃度、運動率、精子の形態などを正確に調べます。診断となる基準は一般に、2010年に決められたWHO(世界保健機関)の基準値が用いられます。


正常精液の基準値(WHO 2010年)

精液量 1.5ml以上
pH 7.2以上
精子濃度 1500万/ml以上
総精子数 3900万以上
精子運動率 (高速前進+非前進)40%以上
※非前進:ゆっくり、または不活発な前進精子
正常精子形態率 4%以上
生存精子率 58%以上
白血球数 100万/ml未満


精液性状による診断(WHO 2010年)

正常精液 WHOの正常精液基準値を満たすもの
乏精子症 精液濃度が1ml 中に1500万未満
精子無力症 精子運動率(高速前進+非前進)40%未満
奇形精子症 正常精子形態率4%未満
乏精子−精子無力−奇形精子症 精子濃度、精子運動率、正常精子形態率の
すべてが異常
無精子症 精液の中に精子が存在しない
無精液症 精液が射精されない
PAGETOPへ