一般不妊治療・体外受精・顕微授精 西山産婦人科不妊治療センター

院長 西山幸江(生殖医療専門医・臨床遺伝専門医)
名誉院長 西山幸男(生殖医療専門医)

NEW INFOMATION OF INFERTILITY

クリニック便り

2018年初秋号

テーマ サプリメントの正しい選び方

はじめに

クリニック便りをお届けするのが、前号よりずいぶん間があいてしまいました。お詫びいたします。さて、今号はサプリメントについてお話しいたします。
ネットショッピングの拡がりにより、さまざまな「妊活サプリメント」が簡単に購入できるようになりました。1日も早い妊娠を望むご夫婦には、とても心惹かれる「効果・効能」が強調されている製品もあります。しかし、なかには、含まれる成分名や含有量、製造工程などがはっきりしない製品、あるいはとても高価な製品も見受けられます。
何より、サプリメントは日々の食べ物同様に体内に摂取するものですから、とにかく安全な製品でなければいけません。また、医療機関の治療費に加えてサプリメントの購入が家計の負担になる心配もあります。
以上のことから、患者様におかれましては、ぜひ、サプリメントの選び方について正しい知識をもっていただきたいと考えた次第です。
なお、今号は不妊カウンセラー西山純江が担当いたします。医学的な内容については、西山幸江院長、西山幸男名誉院長の校閲を受けております。

サプリメントって何でしょう?

今回はサプリメントの正しい選び方や参考になる豆知識をとりあげてみました。
サプリメントという言葉はとても身近ですが、漠然としているともいえます。一般的には、「薬ではないけれど、健康によいもの、健康を増進するもの」と考えている方が多いのではないでしょうか。まずは、サプリメントとは何か?を整理してみましょう。

サプリメントは「広い意味の健康食品」のこと

日本の場合、サプリメントは「健康食品」のひとつです。厚生労働省では、「健康食品と呼ばれるものについては、法律上の定義は無く、広く健康の保持増進に資する食品として販売・利用されるもの全般を指しているものです」としています。以下に、厚生労働省が発表しているサプリメントについての説明を紹介いたします。

【健康食品やサプリメントの名称について】

ほとんどの人が知っている健康食品やサプリメントという言葉ですが、実はその用語に行政的な定義はありません。一般に、健康食品とは「健康の保持増進に資する食品全般」が、また、サプリメントとは「特定成分が濃縮された錠剤やカプセル形態の製品」がそれぞれ該当すると考えられています。
しかし、明確な定義がないため一般の消費者が認識している健康食品やサプリメントは、通常の食品から、菓子や飲料、医薬品に類似した錠剤・カプセルまで多岐にわたり不明確です。
ちなみに、米国ではDietary Supplementを「従来の食品・医薬品と異なるカテゴリーの食品で、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、ハーブ等の成分を含み、通常の食品と紛らわしくない形状(錠剤やカプセル等)のもの」と定義し、またヨーロッパでも同様のものを“Food Supplement”と定義しています。
広い意味で考えれば、サプリメントも健康食品の一つと考えることができます。

サプリメントは「医薬品」ではありません

サプリメントは、錠剤やカプセルの形をしていることが多いため、「薬と同じようなもの」と思っている方もおられるようです。しかし、前項で触れたように、「広い意味の健康食品」ですから、医薬品ではないことをしっかり肝に銘じておきましょう。
医薬品ではないので、「体の構造や機能に影響する表示」をすることは、原則として認められていません。「サプリメント大国」と呼ばれるアメリカのDietary Supplementの場合も、「病気を診断する、予防する、治療する、軽減する」などの表現をすることは禁止されています。つまり、医薬品のように「効果・効能」を表示できないのがサプリメントです。 なお、日本の場合、健康食品のなかでも、特定保健用食品(トクホ)、栄養機能食品、機能性表示食品については、限られた範囲で特定の保健機能や栄養機能を表示することができます。
ちなみに、医薬品とは、特定の病気や症状に対する予防や治療効果が認められているもので、認定された病気の予防や治療効果があることを記載することができます。
厚生労働省/「健康食品」のホームページに詳しく記載されていますので、詳細は巻末の「補足 豆知識:健康食品および保健機能食品の種類」をご覧ください。

サプリメントの正しい利用法は?

サプリメントは医薬品とは異なり、どんなサプリメントを選び、利用するかは原則として患者様ご本人の判断に任せられています。しかし、繰り返しますが、「サプリメントは体内に摂取する食品」です。くれぐれも製品選びには慎重を期しましょう。
また、何か病気があって治療中の方や薬を処方されている方の場合、ときにはサプリメントが治療や処方薬の効果を低下させる場合があります。アレルギー体質の方のなかには、含有成分に対してアレルギー反応を起こすケースもあります。サプリメントだからと安易に考えず、正しく利用するように注意しましょう。

サプリメントを選ぶポイント

安全性の高い製品かどうかを判断する目安はいろいろありますが、判断材料として以下の項目を参考にしてください。ポイントは以下の3項目です。

  • 原材料や成分、含有量が明記されている製品
    普通の食品であれば、見た目で豚肉、大根など、素材を確かめることができます。しかし、サプリメントの場合はたとえば、亜鉛のサプリメントといわれても亜鉛そのものを目にする機会はありません。まして、錠剤やカプセルなので、自分で判断することはできません。原材料や成分名、含有量などがきちんと表示されている製品を選びましょう。
  • GMP(製造工程管理基準)が導入されている製品
    GMPとは、原材料の選択、製造、出荷までの全過程で、製品が安全に作られ、一定の品質が保たれるようにするための「製造工程管理基準」を指します。厚生労働省においても、「健康食品の安全確保」を目的とする厚生労働省の取り組みのひとつとして、GMPの導入と推進を挙げています。
  • 製造元、販売元が明記されている製品
    医薬品の場合は製造元のほとんどは製薬会社ですが、サプリメントの場合は製薬会社や食品会社だけでなく、非常に多種多彩です。しかし、可能な限り、信頼できる企業が製造、販売している製品を選びましょう。
アレルギーが心配なサプリメントの成分について

サプリメントに含まれ、アレルギー反応や薬剤性の肝機能障害を起こす可能性があるのは以下の通りです。
ユーカリ、松樹皮抽出物、プロポリス、ローヤルゼリー、サフラン、コンドロイチン酸、サイリウム(食物繊維の一種)、レッドクローバー(マメ科の植物/赤詰草のこと)などで、天然由来の原材料に多くみられます。

病気や医薬品との相互作用が心配な成分について

病気をもつ方や医薬品を服用している方の場合に、サプリメントに含まれている成分との相互作用が心配なものがあります。
一例をあげると、抗凝血剤のワルファリンカリウム(ワーファリン)を服用している場合、朝鮮ニンジンの場合は薬の効果が増強する、ニンニク・ビタミンK(青汁・クロレラを含む)の場合は、薬の効果が減弱するという報告があるそうです。

海外からの個人輸入はやめましょう

サプリメントの中には、DHEAやメラトニンのように、日本ではサプリメントとして製造・販売されていないものがあります。
厚生労働省発行の「健康食品の正しい利用法」には、「過去に健康被害を生じた製品のほとんどが、「海外からの輸入品」「錠剤・カプセル状の食品」です。インターネットを介した購入だけでなく、海外旅行のおみやげ品も個人輸入に該当します。これらをあげたりもらったり、軽い気持ちでやりとりしないように気をつけましょう。


  • DHEAは必ず、医師の指示通りに使用しましょう。

DHEAは「デヒドロエピアンドロステロン」という長い名前のホルモンで、主に副腎から分泌されます。DHEAは男性ホルモンの一種ですが、女性の体内ではエストロゲンを作る材料になります。不妊症の改善に効果が期待できることから、マザーホルモンとも呼ばれます。また、卵巣予備能の指標となるAMHの数値が改善される等、卵巣機能を賦活化する作用があるといわれています。
日本では医薬品として使用される原材料リストに記載されていますが、現時点では国内ではDHEA製剤は製造されていませんし、DHEAサプリメントもありません。このため、海外からの輸入に頼るわけですが、医薬品の輸入は医師または薬剤師の有資格者にのみ、限られています。
日本の場合、DHEAの処方については非常に厳格なため、個人輸入でサプリメントを取り寄せる方もいるようですが、粗悪品も多いといわれています。DHEAは必ず医師の指示に従って利用しましょう。当院では平成22年(2010年)より、DHEAサプリメントを取り扱っています。


  • 妊活中の方はメラトニンサプリメントの摂取は避けましょう。

なお、厚生労働省発行のサプリメントに関するパンフレットでは、妊婦さんの中には「妊娠を望む女性」が含まれています。また、「眠気が安全性の問題になる可能性のある人たち」には、日常的に車を運転する人が含まれると思われます。妊娠を望んで当院を受診する患者様には、車を運転して通院する方が多数おられます。妊活中の女性はメラトニンのサプリメントの摂取を控えるべきと思います。

当院で取り扱っているサプリメント

漢方は体質改善に役立ち、サプリメントは体質改善のために栄養・ビタミンなどの補給で微細調節に役立ちます。若返り、健康には2つの柱は欠かせないものです。
当院では治療を補完する目的で、何種類かのサプリメントを取り扱っています。詳しくは医師にご相談ください。


  • 一例として、当院では「ラクトバチリス乳酸菌サプリメント」をお勧めする場合があります。

当院の場合は、人工授精による妊娠の失敗が続くケース、体外受精・顕微授精による良好胚または胚盤胞移植において、反復して子宮内膜への着床に失敗するケースなどに、ラクトバチリス乳酸菌サプリメントをお勧めすることがあります。ラクトバチリスは乳酸桿菌(かんきん)のことで、善玉菌である乳酸菌のひとつです。
私たちの体の中には、腸内細菌を含めて多種多様な細菌群(細菌フローラ)が住み着いています。子宮や腟も例外ではなく、子宮内フローラ、腟内フローラが存在しています。細菌には善玉菌、悪玉菌のほかに、日和見菌(ひよりみきん)といって、善玉菌・悪玉菌のどちらか優勢なほうに加担する中間菌があります。
近年、子宮内・腟内ともに善玉菌のラクトバチリスが優勢な場合に、妊娠率が高く、流産率が低いことがわかってきました。 子宮内フローラの状態に関しては、子宮内膜を採取して次世代シーケンサーによる細菌の解析検査を受けていただかないといけません。しかし、腟内フローラは外来で受けられる簡便な腟分泌物検査によって、ほぼ把握することができます。
たとえば、腟内の善玉菌のラクトバチリスが減少し、悪玉菌が増加する腟内フローラのバランスが崩れる状態を「細菌性腟症」といいます。細菌性腟症を放置すると、腟内の悪玉菌が子宮内に入り込み、子宮内フローラのバランスも崩れる心配があり、人工授精や体外受精・顕微授精による胚移植の妊娠率が低くなります。当院では、ラクトバチリス乳酸菌サプリメントの併用によって、頑固な腟炎が改善する傾向がみられ、おおいに期待しているところです。

細菌性腟症、子宮内フローラ検査等については、近々にクリニック便りにて、西山幸江院長が説明させていただきます。

【補足】 豆知識:健康食品および保健機能食品の種類

健康食品のうち、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品は、保健機能食品制度によって、「おなかの調子を整えます」「脂肪の吸収をおだやかにします」など、特定の保健の目的が期待できる(健康の維持及び増進に役立つ)食品の場合にはその機能について、また、国の定めた栄養成分については、一定の基準を満たす場合にその栄養成分の機能を表示することができます。

出典:厚生労働省/「健康食品」のホームページ


  • 特定保健用食品(トクホ)

健康の維持増進に役立つことが科学的根拠に基づいて認められ、「コレステロールの吸収を抑える」などの表示が許可されている食品です。表示されている効果や安全性については国が審査を行い、食品ごとに消費者庁長官が許可しています。


  • 栄養機能食品

一日に必要な栄養成分(ビタミン、ミネラルなど)が不足しがちな場合、その補給・補完のために利用できる食品です。すでに科学的根拠が確認された栄養成分を一定の基準量含む食品であれば、とくに届出などをしなくても、国が定めた表現によって機能性を表示することができます。


  • 機能性表示食品

事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品です。販売前に安全性および機能性に関する根拠に関する情報などが消費者庁長官へ届けられたものです。ただし、特定保健用食品とは異なり、消費者庁長官の個別の許可を受けたものではありません。


不妊カウンセラー 西山純江


【参考資料】

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/hokenkinou/
『「健康食品」ホームページ』 厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/dl/kenkou_shokuhin00.pdf
「健康食品の正しい利用法」 厚生労働省 医薬食品局 食品安全部

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000113707.pdf
「健康食品による健康被害の未然防止と拡大防止に向けて」
厚生労働省 日本医師会 国立研究開発法人/医薬基盤・健康・栄養研究所

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000152239.pdf
「厚生労働省の取組9 健康食品の安全確保」厚生労働省 医薬食品局 食品安全部

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