一般不妊治療・体外受精・顕微授精 西山産婦人科不妊治療センター

院長 西山幸江(生殖医療専門医・臨床遺伝専門医)
名誉院長 西山幸男(生殖医療専門医)

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過去のクリニック便り

2011年冬号

テーマ男性不妊についておさらいをしましょう その2

2011年も残りわずかとなりました。今年は東日本大震災という未曾有の自然災害に加えて、地震・津波による福島原発の放射能漏れという非常事態に襲われました。とくに原発事故については、いまだ過去形にならない状況です。 自然の脅威は時として人類の無力を示唆しているかのようです。でも人は自然と共存し時を経て今の時代へとつないでいます。不安はありますがどんな時でも「希望」という気持ちを失わないで前を向いていけるように願っています。 多難な年の最後を締めくくるクリニック便りは、前号の不妊治療法としての人工授精(AIH)について少しご説明を加え、今後もご夫婦に仲良く治療を続けていただくヒントについてお話ししたいと思います。Q&A形式で一部紹介させていただきます。生殖関係各学会での話題についても今後順次掲載させていただきたいと思っています。

人工授精(AIH)
AIHの意味

AIHは英文の Artificial Insemination with Husband's semen の略で、ご主人の精子を子宮内に送り込む方法です。通常「人工授精」という時は配偶者間人工授精を指しているので、AIHと略されることが多いのです。

軽症の男性不妊が対象です。

人工授精は精子数がある程度確保できないといけないので、対象となるのは比較的軽症の精液異常です。また女性側に頸管粘液不全がある場合にも行います。人工授精では精子は子宮頸管をパスして直接子宮の中に入れるので、受精の場である子宮膨大部へ到達する精子数は多くなります。
普通、精子は腟内に射精されると、子宮の頸管、子宮腔、卵管を通り卵管膨大部に達し、ここで受精が行われますが、乏精子症、精子無力症、奇形精子症などの男性不妊の場合、膨大部に到達する精子の数が極めて少なくなります。人工授精は精子を子宮内に注入し、膨大部に達する精子数を増やすことで、受精の可能性を高めるわけです。

排卵日を特定する性交指導が重要です。

人工授精で大切なのは、排卵日に合わせて実施するタイミングです。せっかく精子を入れてもすでに排卵が終わっていては意味がありません。このため、人工授精を受ける方は基礎体温をきちんとつけること、主治医の指示によるホルモンの値のチェックと、経腟超音波による卵胞計測を受けることなどが欠かせません。

精液から精子を回収します。

精液は、精液採取室にて、ご主人が自分で採取容器に全量を採取していただきます。採取された精液を専門の技師が調整します。

洗浄濃縮した精子を用います。

人工授精では排卵日に合わせて、洗浄・濃縮した精子を直接子宮の奥へ入れます。精子を洗浄濃縮し、数が少なめでも元気な精子を集め、それを授精用カテーテルを使用して子宮に戻すので、精子は卵管に入って卵管膨大部に行くぶん、卵子にたどり着きやすくなります。

精子と卵子の出会いの場は卵管膨大部です。

子宮内にたどり着いた精子は、卵管を進みながらここで少しの間卵子が来るのを待つか、あるいは少し前に来ていた卵子と出会って受精します。

採取した精液は凍結保存ができます。

男性が仕事などの都合で、AIHのタイミングに合わせての精液採取が難しい場合にも、凍結精子を使った人工授精(AIH)も可能です。

不妊治療を受けるにあたり患者様から寄せられる精液検査、AIHに関する質問について
 一例をあげてお答えさせていただきます。
Q 次回の検査で夫が精液検査を受けます。夫は自分に原因があるとは考えていないようですが、その可能性もあると伝えたほうがいいでしょうか。

 不妊の原因は男女双方にあり、男性不妊が占める割合は40~50%と言われています。最近は男性不妊の可能性があると知る男性が増えてきましたが、全く知識のない方もいます。
男性の基本検査は精液検査ですが、男性側に原因があるとわかると、多くは人工授精を勧められます。ときには治療の初めから顕微授精を提案される場合もあります。予備知識が全くないとショックを受ける方も少なくないので、事前に勉強しておくに越したことはありません。通院中の方は病院からテキストや説明書をもらうといいでしょう。まだ通院先が決まっていない方は、信頼できる医療機関のHPから該当する項目について知識を得るのもひとつの方法です。

Q 検査や治療の時に夫はついてきてくれません。思いやりがないのでしょうか。

 不妊の原因が女性側にある場合はもちろんのこと、男性側にある場合も、検査や治療の過程では女性側の負担が大きいものです。通院の回数も女性のほうが圧倒的に多くなります。人工授精を例に考えてみましょう。

  • 人工授精の実施時期は女性の排卵時期に合わせる必要があり、排卵時期を特定するために、女性は超音波検査や血液検査を受けるための通院が必要です。
  • 排卵を確実にするために排卵促進剤を使用する場合は、女性は月経終了後からホルモン剤を使用することがあります。
  • 人工授精実施当日は、男性は精液採取が必要です。病院で採取する場合もありますが、自宅採取も可能です。自宅採取の場合には夫は病院に出向く必要がないので、女性ひとりが病院へ出向き、人工授精の処置を受けたあと少しの間、安静にしたあとで帰宅します。この間、夫の付き添いがなくずっとおひとりの場合には、寂しさや孤独な思いをされることもあるでしょう。

若い世代では妻への愛情表現が豊かな男性も増えていますが、「黙っていてもわかるだろう」と考える男性も、とくに日本男性にはまだまだ多いものです。また、男性と女性では「愛情」の表現に違いがあります。女性が男性に「好きです」と言われた場合、自分のどこが好きなのか? 好きの程度はどの程度なのか? 細かく知りたがるものです。ところが男性は「好き」だけ、大雑把といえばその通りです。
ご夫婦が仲良く連れ添うには男性・女性、それぞれの違いを理解することが大切なのでしょう。その上で「思いやりを具体的に表現して欲しい」と率直に話してはいかがでしょう。ひとつの方法として、1日1回、夫婦の間でメールを交換しあう習慣をもつのもいいでしょう。毎日ほぼ決まった時間帯、たとえば午後12時から1時頃のお昼休みにメール交換をするのです。それもできればご主人から発信するのが理想的です。女性は「診察は無事終わった?」の一言メールだけでとても安心できるものなのだと教えてあげてください。

ご夫婦が仲良く治療を続けるために
「赤ちゃんを抱く日に向かって‥Q&A」

次号からのクリニック便りは、ご夫婦が互いに思いやりを寄せて不妊治療を仲良く続けていただけるように・・と、そんな願いをこめて、患者様が抱きがちな疑問や不安を取り上げQ&A形式で丁寧にお答えできればと思います。前号と今回では男性不妊について基本情報を整理いたしましたが、ご主人に原因がある場合には、治療のさまざまな場面で妻の側に遠慮が生まれます。なかなか口にしにくい性生活の悩みを含めて、ご一緒に考えてみたいと思います。「新しい命はご夫婦の愛の結晶である」という原点に立ち戻って進めていきたいと思います。

さいごに

過日、来日されたブータン王国ジグミ・ケサル国王の国会での演説をTVで拝聴した折の感動を少しお話させていただきます。
演説はとても素晴らしいもので多くの日本人に強い感動を与えました。とくに私の印象に残ったのは、演説の機会を与えていただいたと天皇皇后両陛下、そして私たち日本国民に謝辞を述べられたおり、「妻ジェツンと私は、結婚のわずか1ヶ月後に日本にお招きいただき、ご厚情を賜りましたことに心から感謝申しあげます」と、奥様の名前を挙げられたことです。新婚旅行として日本を選ばれた故でもあるかと思いますが、日本滞在中のすべての行程で仲睦まじいご夫婦の姿を見せていただいたことに深く感動しました。
この演説にはたくさんの反響が寄せられたようですが、私には日本人が忘れかけている高貴な人間性、とくに夫婦愛についてお手本を示していただいたような気がいたしました。
また、ブータン王国ではご存知のように、「国民総幸福量(GNH)は国民総生産(GNP)よりも重要である」として、GNHを建国の理念に掲げています。GNHは心理的幸福、時間の使い方とバランス、文化の多様性、地域の活力、環境の多様性、良い統治、健康、教育、生活水準の9つの指標から構成され、定期的に国民に問いかけながら、政策に反映させているそうです。とくに「心理的幸福」には正の感情(寛容、満足、慈愛)と負の感情(怒り、不満、嫉妬)があるとのことに、心惹かれました。
今号では不十分ながらご夫婦の愛と和に触れてみましたが、寛容こそが夫婦愛の根幹かとも思います。そして、願わくば、当院の患者様がおひとりでも多く「満足」の感情をお持ちいただけるように、職員一同、誠心誠意、仕事に邁進していきたいと改めて決意をした次第です。

平成23年も間もなく終わり新しい年へと移ってまいります。
くる年が少しでも災害のない平和な年になりますようにと祈っています。
宇宙から見ると地球は青く輝くとてもきれいな星とのことです。
地球の歴史は自然の驚異におびえることも経験してきましたが、生物は子孫をつなぎ、今なお時を進めています。私たちの自然が壊れることなく、人が幸福を感じられる星として新しい年を迎えたいですね。

不妊カウンセラー 西山純江

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