一般不妊治療・体外受精・顕微授精 西山産婦人科不妊治療センター

院長 西山幸江(生殖医療専門医・臨床遺伝専門医)
名誉院長 西山幸男(生殖医療専門医)

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クリニック便り

2007年春号

テーマ わかりやすい遺伝の話―No.2 「メンデルの法則」と遺伝のお話

ことしのテーマは遺伝に関係したお話です。
今回は皆さんも聞き覚えのある「メンデルの法則」と遺伝のお話です。

「メンデルの法則」とは

「父親に似れば背が高かったのに母親に似て背が低いのが残念」こんな何気ない話にも遺伝が関係しています。身長だけでなく、顔の輪郭や目の大きさ、肌の色、髪の毛の色など、さまざまな形質が遺伝子によって親から子へと伝わります。では、たとえば背が高い父と背の低い母がいる場合、身長という遺伝形質はどのように次世代に伝わるのでしょう。

ここで「メンデルの法則」を思い出してください。
メンデルはえんどう豆を例に優性遺伝と劣性遺伝を説明しました。
背の高いえんどう豆(遺伝子の型AA)と背の低いえんどう豆(遺伝子の型aa)があります。仮にAAは高さ10cm、aaは5cmとします。これを交配してAA、Aa、aaの遺伝子型のえんどう豆ができました。AAの背の高さは10cn、aaは5cmでした。ではAaは両者を合わせた15cmの半分 7.5cmになるかというとそうではなく、10cmになりました。つまりAaの「見た目」はAAと同じで背の高いえんどう豆になったわけです。

Aaの場合、本来もつ遺伝子の型はAAとは違います。それなのにどうして「見た目」はAAと同じになったのでしょう。Aとaのように形質がはっきり異なる2つの遺伝子のことを対立遺伝子といいますが、対立遺伝子を合わせもつAaの場合、Aかaのどちらかが表現型として現れます。えんどう豆の場合、表現型として現れる力はAの遺伝子のほうが強いため、Aaは背の高いえんどう豆になったわけです。

この場合、力が強い遺伝子Aを優性、aを劣性と呼び、次世代にAの遺伝形質が伝わることを優性遺伝、aが伝わることを劣性遺伝といいます。 これが「メンデルの法則」です。

「メンデルの法則」に基づいて、先ほどの親の身長が子に遺伝することを考えてみましょう。背が高いという遺伝子のほうを優性遺伝子(A)、低いという遺伝子を劣性遺伝子(a)とします。父方の遺伝子はAA、母方の遺伝子はaaとすると、子どもは全員Aaで背が高くなります。父方は見た目は背が高くても遺伝子はAaであれば、子どもは背の高い子(Aa)もできるし、背の低い子(aa)もできることになります。

ただし、ここでいう優性、劣性は遺伝する形質が「優性は優れている」、「劣性は劣っている」という意味ではありません。遺伝情報が次世代に伝わるときにAのほうが伝わり、aのほうは隠れてしまうと理解してください。

出典情報

「もっと遺伝を知ろう」
著者:新井一夫(社団法人 日本家族計画協会遺伝相談センター所長)
発行:社団法人 日本家族計画協会

病気と遺伝の関係

私たちは両親から多種多様の遺伝形質を受け継ぎます。身長や顔立ちだけでなく体質や病気などの遺伝形質も受け継ぎます。ある病気が遺伝するとして、Aがその病気になる優性の遺伝子、aは劣性の遺伝子とします。その病気が優性遺伝する場合、持っている遺伝子の型がAaの場合は発病しますが、aaの人は発病しません。劣性遺伝の場合にはaaの人は発病しますが、Aaの人は発病しません。

このように病気に関係する隠れた遺伝子を持っていることを知らずに生活している人はたくさんいるわけです。このように隠れた遺伝子を持っている人を保因者と言います。ふだんは何も不都合はないけれど、「赤ちゃんが欲しい」というときに、夫婦のどちらかに隠れている遺伝子があって、非常にまれですが不妊症や不育症の原因になることもあります。

次回は不妊症や不育症に関係する遺伝についてお話したいと思います。

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