一般不妊治療・体外受精・顕微授精 西山産婦人科不妊治療センター

院長 西山幸江(生殖医療専門医・臨床遺伝専門医)
名誉院長 西山幸男(生殖医療専門医)

排卵を整えるホルモン療法

排卵を整えるホルモン療法

排卵を整えるホルモン療法

成熟した卵子が排卵されないと、タイミング法も人工授精も、最初の段階でつまずいてしまいます。このため、排卵を整える治療は非常に重要です。
さまざまな排卵促進剤がありますが、それぞれの個人差に合わせて、体に負担のかからないやさしい方法を選んでいきます。

カウフマン療法

対象となる方

無排卵や無月経などの排卵障害がある方が対象です。本来、卵巣から分泌されるエストロゲン(卵胞ホルモン)やプロゲステロン(黄体ホルモン)を補充します。これらのホルモンの中枢に対するリバウンド効果により、自然排卵が起こることを期待する治療法です。

エストロゲン剤・プロゲステロン剤の作用

それぞれに内服薬、注射薬があります。エストロゲン剤には皮膚に貼る貼付薬があります。 それぞれ、卵巣から分泌されるエストロゲンおよびプロゲステロンと同じ作用を持ちます。また、エストロゲンとプロゲステロン、両方の作用をもつ合剤もあります。投与法はその方の年齢や症状など、個人差によって違います。

具体的な方法

最も一般的な内服薬による方法を紹介します。
カウフマン療法は28日間(4週間)を1周期とします。
投与開始日からエストロゲン剤を1日2錠(1日量1.25mg)内服します。12日目からは、合わせてプロゲステロン剤を1日2錠(1日量10 mg )内服します。
エストロゲン剤は21日間、プロゲステロン剤は10日間、内服します。開始から21日目(3週間)の同じ日が薬の終了日になり、ここから1週間は休薬します。薬をやめると2~3日で月経に似た出血が起こります。

クロミフェン療法とHMG-HCG療法

一般不妊治療では通常、クロミフェン療法、またはhMG-hCG療法が用いられます。

クロミフェン療法
対象となる方

月経不順の方や時々排卵のない方のように、ゴナドトロピン(卵巣を刺激する性腺刺激ホルモン)の分泌が不十分な場合は、クロミフェン療法が有効です。卵巣からエストロゲンがある程度分泌されていることが条件です。

クロミフェンの作用

クロミフェンは代表的な内服による排卵促進剤です。視床下部や下垂体、卵巣に作用して排卵に必要なホルモンを分泌させる働きがあります。

具体的な方法

クロミフェンの投与量は、年齢や卵巣機能、排卵障害の程度などによって個人差があります。通常、月経5日目から5日間、1日1~2錠(1日量50~100㎎)を服用します。内服薬なので、毎日通院しなくてもいい便利さがあります。

クロミフェンの効果

クロミフェンを服用するとFSH(卵胞刺激ホルモン)の分泌が促され、卵胞が発育しはじめます。クロミフェン服用開始日から12日前後で排卵します。

HMG-HCG療法
対象となる方

クロフェミン療法で排卵に至らない場合には、HMG−HCG療法を行います。

HMG・HCGの作用

HMG、HCGともに注射薬です。HMGには下垂体から分泌されるゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)と同じ作用があり、直接卵巣を刺激して卵胞を発育させます。HCGにはLH(黄体化ホルモン)と同じ作用があります。HMGの作用で卵胞が十分に発育したところで、HCGを投与すると排卵が起こります。

具体的な方法

まず、HMGを月経開始日の5~7日目から1~2週間投与します。卵巣に多数の卵胞が発育し、十分に成熟したと確認できた日にHCGを投与します。HCGを注射すると通常36~48時間の間に排卵が起こります。
HMG-HCG療法は注射なので、通院治療が必要です。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の場合

症状が軽い場合にはクロミフェン療法で規則的な排卵が起こる場合がありますが、クロミフェン単独で排卵が起こらない場合には、クロミフェンに加えてプレドニン(ステロイド剤)やメトフォルミン(インスリン抵抗性改善薬)を併用することがあります。漢方薬の温経湯や柴苓湯を併用する場合もあります。
以上の治療で排卵が起こらない時は、FSH(卵胞刺激ホルモン)+HCG療法を行いますが、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)では卵巣過剰刺激症候群(OHSS)が起こりやすいので、投与量を慎重に調整します。

高プロラクチン血症の場合

プロラクチンの分泌を抑える内服薬で治療すると、排卵が起こってきます。これまでは毎日内服する「パーロデル」「テルロン」が多用されてきましたが、最近は1週間に1回の内服で済む持続性の高い「カバサール」が処方されるようになっています。

黄体機能不全の場合

高温期にプロゲステロン(黄体ホルモン)補充療法を行います。プロゲステロン剤には内服薬と注射薬および腟座薬があります。投与量は症状と程度に応じて個人差があります。また、排卵期と黄体期にHCGを注射することもあります。

主な排卵促進剤と作用

排卵促進剤は単独で使うことは少なく、排卵障害の原因や程度によって、いくつかの排卵促進剤を組み合わせます(クロミフェン+HCG、HMG+HCGなど)。また、原因によっては副腎皮質ホルモン(ステロイド)剤を併用することもあります。

クロミフェン 内服薬。
非ステロイド系の弱いエストロゲン剤であり、投与されると、内因性のエストラジオールと競合的に間脳のエストロゲンレセプターと結合し、血中のエストロゲン濃度が低下したかのように認知され、視床下部からのGnRHの放出を促進します。
その結果、下垂体からFSH(卵胞刺激ホルモン)やLH(黄体化ホルモン)を分泌させ、結果として排卵を促します。副作用の少ない排卵促進剤です。
*エストラジオール/エストロゲンの一種
*GnRH/性腺刺激ホルモン放出ホルモン
HMG
(更年期婦人尿性腺刺激ホルモン)
注射剤。
性腺刺激ホルモン(FSH・LH)と同じ作用をもつホルモン剤で、FSHの分泌量を増やして卵胞の発育を促す作用があります。HCGと併用します。
FSH製剤 注射剤。
FSHのみのホルモン剤です。フォリスチムはリコンビナント(遺伝子組み換え)によるFSH製剤で、従来のHMG製剤(更年期婦人尿が原料)に比べ、LHの混入がなく、純度が高いメリットがあります。遺伝子組み換え型の薬は、インスリンや成長ホルモンなどが広く使われており、安全性は心配ないでしょう。
HCG
(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン)
注射剤。
排卵を起こすLH(黄体化ホルモン)に似た働きをもちます。卵子を発育させるクロミフェンやHMGと組み合わせて使います。
プレドニン
(副腎皮質ホルモン剤)
内服薬。
副腎から分泌される副腎皮質ホルモンの作用をもちます。主に多嚢胞性卵巣症候群に対してクロミフェンと併用します。
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