一般不妊治療・体外受精・顕微授精 西山産婦人科不妊治療センター

院長 西山幸江(生殖医療専門医・臨床遺伝専門医)
名誉院長 西山幸男(生殖医療専門医)

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過去のクリニック便り

2014年初夏号

テーマ不妊治療に必要な検査 ご夫婦で不妊治療を受ける 検査の目的と重要性について

初めて当院を受診いただいた患者様には、受けていただきたい「必須の検査項目」があります。
大きくは、*健康状態 全般を知るための検査、*妊娠後に赤ちゃんに影響が出る心配のある感染症の検査、*不妊症の原因を探り、治療法を選ぶための検査に分けられます。
また、ご主人にも、不妊症の基本検査である精液検査のほかに、感染症の検査を受けていただきます。
これらの検査は、ご夫婦ともに健康な体であることを基本に治療を受けていただき、妊娠後の順調な経過とおなかの赤ちゃんを守るためにとても大切な検査です。検査の目的を十分にご理解いただき、積極的に検査を受けていただくようお願いいたします。

感染症の検査について

不妊治療を始めるにあたり、受けていただく検査のなかには、妊娠後に母子感染の心配がある感染症の検査が含まれ、HIV(エイズウイルス)やクラミジア感染症など「性感染症」の検査もあります。
患者様は自分には無用な検査と思われるかもしれません。費用もかかるため、なぜ受けなければならないのか、疑問に思われる患者様もおられると思います。
しかし、性感染症のなかには不妊の原因になるものがあります。たとえばクラミジア感染症やカンジダ、トリコモナス等では卵管に感染が及ぶと、卵管が詰まる、卵管采が癒着するなど、重大な不妊原因となる場合があります。
このため、当院だけでなく、不妊治療を行う医療機関のほとんどは、これらの検査を積極的に実施しています。
また、これらの検査のなかには、国の「母子保健事業」として、厚生労働省が推奨していて、検査項目の種類により費用の全額または一部を国または地方自治体が負担する場合があります。しかし、まだ一部なので、一般的には検査費用は患者様が自費負担いただくことになりますが、ご自身の健康とやがて授かる赤ちゃんの健やかな成長のために、ぜひ受けていただきたいものです。
なお、性感染症はピンポン感染といって、ご夫婦が互いに移しあうため、検査で陽性とわかった場合には、必ずご主人も検査を受け、ご夫婦が同時に治療を受ける必要があります。

治療に必要な検査項目 【女性の検査】そのⅠ

以下の検査項目は、病気として健康保険が適応できる場合と適応できない場合があります。

  • ①尿検査
    • 初診時スクリーニングとして、健康状態の基本的なチェックのために行います。
    • 尿中にタンパク質や糖が出ていないか、尿が濁っていないかなどを調べます。
    • 尿中にタンパク質が出ている場合には腎臓病、糖が出ている場合は糖尿病、尿が濁っている場合には膀胱炎や尿路感染症が疑われます
  • ②腟分泌物検査
    • カンジダやトリコモナスに感染していないかを調べる検査です。カンジダは真菌(カビ)の一種で、体の抵抗力が落ちている時にかかりやすくなります。トリコモナスは原虫の一種で、性行為による感染のほか、温泉など共同浴場の椅子などから感染するケースもあります。
    • 腟分泌物(おりもの)を採取して、顕微鏡で検査します。
    • 感染している場合、自覚症状がなくても夫婦間で移しあうピンポン感染により、感染を繰り返す、治りづらくなるなどの心配があるため、早めの治療が必要です。
  • ③帯下(おりもの)細菌培養検査
    • おりものを培養することで、②の顕微鏡検査では発見できないごく少量の病原菌の発見や淋菌(原因菌は細菌です)の有無がわかります。結果が出るまで1週間ほどかかります。
    • 淋菌、カンジダ、トリコモナス、その他の雑菌がいる状態を放置しておくと、卵管が詰まって卵子の通過障害が起こる、卵管采が癒着し、排卵した卵子を卵管内に取り込めなくなるなど、不妊の原因になることがあります。
    • 感染がわかったら、それぞれの原因に応じた治療を行います。
  • ④クラミジアDNA検査(頸管粘液)
    • 女性の場合、クラミジアに感染してもほとんどはっきりした症状がなく、感染を知らないまま、卵管へと感染が進み、不妊の原因となる場合があります。このように、クラミジア感染症は不妊原因のなかで最も多い卵管因子の原因になるため、感染を早く発見して早く治療を受けることが大切です。
    • クラミジア感染症の原因は、クラミジアトラコマティスという病原微生物ですが、②の顕微鏡検査や③の細菌培養検査では検出しにくく、検査時点でクラミジアの感染が進行形かどうかを調べるには、クラミジアDNA検査を行います。
    • クラミジアDNA検査は、頸管粘液に含まれるクラミジアトラコマティス特有のDNAを増やして検出する方法で、検査の結果、陽性の場合には、卵管炎が起こっていないかどうかなどを調べつつ、治療を急ぎます。
  • ⑤子宮頸がん検査
    • 子宮頸がんは子宮の入り口(子宮頸部)に発生するがんです。性行為の経験がある女性では若年層でも罹患する可能性があり、一般婦人科はもちろんのこと、不妊外来を受診した場合も必ず受ける基本の検査です。
    • 子宮頸部の細胞を採取して、がん細胞の有無を調べます。結果が出るまで1週間ほどかかります。
    • 陰性の場合には安心して不妊治療を受けることができます。万一、陽性とわかった場合、早期の段階であれば、子宮を温存して妊娠・出産することも可能になっていますから、早期発見のためにも検査は必須です。
  • ⑥子宮頸管粘液検査
    • 子宮頸管は腟に続く子宮の入り口の部分です。ここからは精子が子宮内に入るために必要な子宮頸管粘液が分泌されています。
  • ⑦経腟超音波検査
    • 腟から超音波検査用の器具を挿入して、子宮や卵巣の状態を観察する検査です。痛みはありません。
    • 子宮の観察:不妊・流産・早産の原因となる形の異常や子宮筋腫などがないかを診ます。
      形の異常(子宮奇形)の程度が高い場合や、大きな子宮筋腫がある場合、受精卵が着床しにくいため、不妊の原因となることがあります。また、無事に着床しても流産や早産になりやすく、不育症の原因となることがあります。
    • 卵巣の観察:卵巣腫瘍(子宮内膜症によるチョコレート嚢胞・卵巣がんなど)の有無のほか、卵胞(卵子の入った袋)のチェックを行います。
    • 卵胞のチェック:卵胞の大きさを測ることで、排卵があるかどうか、排卵の際に卵胞が十分に成熟しているかどうかなどを観察できます。不妊原因の一つである排卵因子の検査に欠かせません。
治療に必要な検査項目 【女性の検査】そのⅡ
以下はすべて血液検査です。初診または2回目の来院時に採血した血液で検査を行います。
以下の検査項目のうち、風疹抗体検査、肝炎ウイルス検査については、三重県在住の患者様で、無料受診券発行の条件に合う方の場合は、公費で検査を受けることができます。そのほかの検査は自費となります。
  • ①血液型の検査
    • 治療上、輸血などの緊急処置が必要な場合に備えて、血液型(ABO式血液型/Rh式血液型)を調べます。
  • ②貧血検査
    • 貧血があると、疲れやすいなどの不調のほか、程度が高いと不妊の原因になることがあり、貧血の検査は必須の検査といえます。
    • 白血球数・赤血球数・血色素・血小板数・ヘマトクリット値などを調べます。
  • ③風疹抗体検査
    • 風疹に対する抗体(免疫)を持っていない、持っていても抗体価が低い場合、妊娠初期に初めて風疹にかかると、先天性風疹症候群といって、おなかの赤ちゃんに先天性の心臓病や難聴などが起こる確率が高くなります。最近、赤ちゃんを望む年齢層で、風疹の小流行が繰り返し起こっていることもあり、妊娠前の抗体検査は必須といっていいでしょう。
    • 風疹抗体検査の結果、抗体がない、抗体価が低いとわかったら、風疹ワクチンの接種が必要です。津市や桑名市など三重県内13市町では、風疹ワクチン接種費用の一部を助成しており、平成26年度も継続されることになっています。
    • 風疹ワクチンは風疹ウイルスの感染力を弱めたものなので、接種後2カ月間は避妊が必要です。また、妊娠中はワクチンの接種は受けられません。
  • ④肝炎ウイルス検査
    • 肝炎ウイルス検査の対象となるのは、HBV(B型肝炎ウイルス)とHCV(C型肝炎ウイルス)です。これらの肝炎ウイルスに感染している方をキャリアといい、キャリアが妊娠した場合、出産時および産後の母子感染によって赤ちゃんに感染する心配があります。
    • HBs抗原検査:B型肝炎ウイルスの感染の有無を調べます。
    • HCV抗体検査:C型肝炎ウイルスの感染の有無を調べます。
    • 検査結果が陽性とわかったら、HBV・HCVともにさらに詳しい検査を行い、赤ちゃんへの感染の確率を調べます。必要なら、赤ちゃんへの感染を防ぐ準備をします。
  • ⑤HIV検査
    • HIVはエイズウイルスのことで、血液検査でHIV抗体を調べて、感染の有無を調べます。日本では感染者は少ないとはいえ、皆無ではありません。感染を知らずに妊娠した場合、妊娠中は症状が進みやすく、おなかの赤ちゃんへの感染率も高いため、早い治療が必要です。このため、HIV検査はほとんどの医療機関で行われています。
  • ⑥ATL/成人T細胞白血病の検査
    • ATLはウイルス性の白血病で、原因となるウイルスは主に白血球(リンパ球)に感染します。
    • HTLV-Ⅰ抗体(ATLA抗体)を調べて感染の有無を調べます。キャリア(陽性)の場合、母乳を通して赤ちゃんに感染することが多いので、母乳哺育を控えることで赤ちゃんへの感染を防ぎます。
  • ⑦梅毒の検査
    • 梅毒(ばいどく)に感染しているかどうかを調べる検査です。梅毒定性TP抗体またはRPR定性という方法で検査します。
    • 妊娠後はすべての妊婦さんが必ず受けないといけない検査で、万一陽性(感染している)の場合は、おなかの赤ちゃんに感染しないように、妊娠初期から適切な治療を受ける必要があります。不妊治療を始める際に調べ、もし陽性の場合には、妊娠前に治療を済ませておくことが大切です。
  • ⑧トキソプラズマ感染症の検査
    • トキソプラズマは寄生虫の一種で、妊娠初期に初めて感染すると、稀なことですが、先天性トキソプラズマ症の赤ちゃんが生まれることがあります。
    • 検査としてはトキソプラズマIgG抗体とIgM抗体があります。IgG抗体は古い抗体です。IgM抗体は最近トキソプラズマにかかったことを示すため、IgM抗体陽性の時は現在もトキソプラズマ原虫が体内にいることを考えて、抗生物質などで治療をしてから妊娠するのがよいといえます。
  • ⑨クラミジアIgG・IgA抗体検査
    • 過去にクラミジアに感染したことがあったかどうかを調べる検査です。
    • IgG抗体は古い感染を、IgA抗体は比較的最近に感染があったことを示します。
      どちらにしても、クラミジアに感染したことがあると、卵管の通過障害が起こり、不妊の原因となっている可能性があります。このため、抗体が陽性(感染したことがある)とわかったら、より慎重に卵管疎通性の検査を行います。
  • ⑩麻疹抗体検査
    • 妊娠中にかかると流早産、子宮内胎児死亡となる率が高くなるので妊娠前に抗体価をチェックしておく必要があります。
      近年は幼少時のワクチン接種率が低下しているため、成人でもかかる人が増加しています。
治療に必要な検査項目 【男性の検査】
血液型の検査は必須です。
そのほか、夫婦間で移しあう心配のある感染症の検査も受けていただきます。
  • ①風疹抗体検査について
    • ご夫婦ともに風疹の抗体のない場合、風疹にかかった夫から妻へ感染する場合があります。このため、夫は妻の妊娠前に風疹抗体検査を受けるのが理想的です。
    • 妻に風疹の抗体があっても、夫は抗体がない、あるいは抗体価が低い場合、夫が風疹にかかって誕生した赤ちゃんに移す心配があります。
    • 以上のことから、夫は不妊治療を始める前に風疹抗体検査を受け、抗体がない方や少ない方は風疹ワクチンの接種を済ませるようにお勧めしています。
    • 風疹ワクチンは風疹の感染力を弱めたウイルスが使用されています。そのため、夫へのワクチン投与の時期は、妻に抗体がある場合でも念のため、妻の月経直後(妊娠していない時)に行います。また、妻に抗体がない時はご夫婦そろって同時にワクチンの接種をお勧めします。
    • 三重県では、妊娠を望む女性のご主人は無料受診券で風疹抗体検査を受けられる場合があります。
  • ②そのほかの検査について
    • ご主人に必ず受けていただきたい検査は、肝炎ウイルス(HBV・HCV)検査、HIV検査、ATL(成人T細胞白血病)の検査、梅毒の検査、クラミジアDNA検査およびIgG・IgA抗体検査などです。
      血液や性行為によって感染します。ご夫婦の間で移しあう性質があるので、ご主人も必ず受けていただきたい検査です。
    • 不妊症の検査には、ご主人の精液検査が必須です。初診は奥様だけが受診された場合、その後早めにご主人も診察を受けてください。その際に血液を採取して、上記記載の検査を含め、それ以外に患者様に必要性のある項目の検査を行います。なお、クラミジアDNA検査は尿検査なので、受ける際には採尿の2時間前から排尿せずに来院してください。
院長からのお願い

治療を始めるにあたり「なぜ多くの検査が必要なのか」と疑問に思われるかと思いますが、検査の目的と重要性について冒頭でお話ししましたように、不妊治療の基本は「ご夫婦が心身ともに健康な体である」ことからスタートするからです。不安を持ったままで治療を受けるのではなく、安心して治療に専念していただくためにもご理解いただき、ご協力をお願いいたします。

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