一般不妊治療・体外受精・顕微授精 西山産婦人科不妊治療センター

院長 西山幸江(生殖医療専門医・臨床遺伝専門医)
名誉院長 西山幸男(生殖医療専門医)

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2010年新春号

テーマ妊娠しやすい生活習慣・代替療法について No.4 「代替医療-アロマテラピーで癒す心身のストレス 基本編」

今号は不妊治療を補完する代替医療の視点から、アロマテラピー(芳香療法)を考えてみたいと思います。不妊治療に携わる医療機関は、常に最新の治療技術を追求していますが、すべてが良い結果に結びつくとは限りません。そんなときに目を向けたいのが、治療を受け入れるベースとなる「体と心」です。私たちの体、そして心はとても繊細です。とくに不妊治療を受ける方は心身ともにストレスを感じやすいことを踏まえながら、代替医療として長い歴史をもつアロマテラピーが、心身の癒しにつながる可能性について、お話していきたいと思います。なお、次号では応用編として、アロマテラピーに用いる精油の種類や実際の使用方法についてお話しします。今号と合わせてお読みいただければ…と思います。

アロマテラピーの基礎知識
アロマテラピーとは…植物から抽出した精油を用いる芳香療法です
●アロマテラピーはフランス生まれです

アロマテラピー発祥の地はフランスです。フランス語読みではアロマテラピー、英語読みではアロマセラピーといいます。アロマは芳香、テラピーは療法のことで、アロマテラピーは芳香療法を指します。
芳香のもとになるのは各種の植物から抽出した精油(エッセンシャルオイル)です。アロマテラピーは、フランスで伝統的に研究されてきた植物療法(フィトテラピー)のひとつです。

●植物がもつ作用を活用する自然療法のひとつです

アロマテラピーの精油は、植物の花・葉・果皮・種子・根などから抽出したさまざまな芳香成分で構成されています。日常生活でレモンを切ったときや、オレンジの皮を剥くとき、さわやかな香りが鼻腔を刺激しますね。これがまさに芳香! 香りの刺激で気分がスッキリする方もいるのではないでしょうか。
実際、レモン、オレンジ、グレープフルーツなどの柑橘類は、精油の原料としてアロマテラピーではよく使われています。アロマテラピーは、植物がもつ私たちの心身に働きかける作用を、精油という形で生活の中に取り入れる自然療法のひとつなのです。

アロマテラピーと代替医療について

代替医療とは、「経験的に心身の癒しにつながりますが、現代の西洋医学領域での検証は難しい医療」といってよいでしょう。アロマテラピーの根底には、植物がもつ心身への作用を、「自然界からの恵み」として活用するという考えがあります。日本にも植物の実や葉、根などを煎じて飲む、皮膚に塗るなど、先人の知恵をもととした医療があります。代表的なものが漢方療法です。たとえば、枇杷や桃の葉で鎮痛や炎症を抑えるなどの効果を期待する民間療法なども、代替医療のひとつともいえます。アロマテラピーは、フランス生まれの代替療法ということができます。

代替医療の根底にある全体主義

代替医療にはさまざまありますが、共通しているのは、ホリスティック(全体主義)という考え方です。たとえば、「病は気から」「気は病から」の言葉に代表されるように、私たちの健康は心と体を切り離しては考えられません。心も体も含めた全体から健康を考えるのがホリスティックです。不妊症を例に考えると、生殖機能という体の一部の機能からだけ考えるのではなく、全身の各機能は相互に影響しあうものとして考えます。さらには食事や運動、自然など、私たちを取り巻く環境すべてを視野に入れて健康を考えます。アロマテラピーの根底にあるのも、このホリスティックの概念です。

アロマテラピーとホメオパシーについて

ホメオパシーは代替医療の一種で、「同種療法」あるいは「類似療法」と呼ばれています。イギリスでは、ホメオパシーは伝統的な代替医療の代表格で、ホメオパスと呼ばれる専門の療法士がいるそうです。ホメオパシーの考え方の根底にあるのは、私たちの体が本来もっている自然治癒力を活性化することです。たとえば発熱しているとき、西洋医学では熱を下げるために解熱剤を用います。一方、ホメオパシーでは、体に起きている発熱症状と似た症状を引き起こす「レメディ」を用いることで、低下している自然治癒力を高めます。アロマテラピーにおいても、同種療法を用いることがあります。たとえば冷え性の場合、多くは血行障害が原因になります。このとき、自律神経のうち、交感神経優位が続いて血管の収縮が強く、血行障害が起きていることがあります。このような場合、通常は血管を拡張させる副交感神経の作用を活発にする精油を用いますが、同種療法として、交感神経優位となるレメディを用いることがあります。

アロマテラピーとレメディ

レメディとは療剤(薬)のことです。アロマテラピーの場合、精油をレメディと呼ぶ場合があります。ただし、ホメオパシーでレメディの原料となるのは薬草だけでなく、鉱物や動物も含まれますが、アロマテラピーに用いられるレメディの原料は植物だけです。また、アロマテラピーの歴史が長いフランスやイギリスでは、アロマテラピーにおいても、クリニカルアロマテラピーという分野で、ホメオパシー同様にレメディを内服するケースがあります。その場合には医師の処方が必要だそうですが、日本の場合、精油を内服することはありません。

アロマテラピーの一般的作用について

香りは嗅覚を刺激します。精油はそれぞれに独特の芳香をもっています。この芳香成分が嗅覚を刺激するとともに、鼻腔や喉、皮膚などから体の中に取り込まれます。

精油成分が体に取り込まれる経路
  • 呼吸によって、上気道(鼻・のど)から下気道(気管・肺)の粘膜に届き、粘膜の血管の中に取り込まれます。
  • アロママッサージの場合は、合わせて皮膚の表皮から毛細血管の中に取り込まれます。
嗅覚を刺激して脳の視床下部に届きます

空気中に漂う精油成分はまず、鼻腔の嗅覚受容体にキャッチされて、嗅覚刺激として大脳辺縁系に届きます。大脳辺縁系は、喜びや怒りなどの情動、意欲、記憶、自律神経などの活動に関与している部位です。また、ストレスの受け皿である視床下部の活動にも関与しています。私たちは、好みの匂いに接すると心がホッとし、逆に嫌いな匂いの刺激を受けると、不快感に襲われます。五感(触覚・味覚・嗅覚・視覚・聴覚)のうち、直接、大脳辺縁系に届くのは嗅覚だけです。匂いによる嗅覚刺激は、ダイレクトに心身の快・不快や感情のコントロールに関係するといえます。

視床下部はホルモンの調整に関与しています

視床下部はホルモンの分泌に大きな役割を果たしています。女性の場合、月経周期や排卵に深く関係するGnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)は、視床下部から分泌されます。精油のなかには、ホルモンの調整に有効とされるものがありますが、それは嗅覚刺激を通して、精油成分が視床下部を刺激するという理由からです。

血液の流れにのって体内を巡ります

呼吸器の粘膜や皮膚から体内に吸収される量は微量と考えられますが、血液中に入った精油成分は、血液の流れにのって体内を循環します。精油のなかには、肩こりや腰痛、冷え性などの解消につながるとされるものがありますが、精油に含まれる血行を促進する成分の効果と考えられています。

アロマテラピーは専門家のアドバイスを受けましょう
療法には芳香浴・入浴・足浴・マッサージなどがあります

アロマテラピーを行うときは、アロマコンサルタントなど専門家のアドバイスを受けてください。精油は植物由来の天然素材ですが、体質によっても、和らげたい症状の内容によっても、使う精油は異なります。精油のなかには、エストロゲン様作用をもつものがある一方で、妊娠後は使用を控えたいものがあります。不妊治療を受けておられる方も、アロマカウンセラーのアドバイスのもとに使用することをお勧めします。

芳香浴・アロマバス・足浴・マッサージなどの一般的な使い方

基本は、アロマポットで精油をたいて室内に香りを漂わせる芳香浴です。そのほかに、お風呂のお湯に精油を数滴落とすアロマバス、精油を数滴入れたお湯に足を浸す足浴、ベースオイルで薄めた精油でマッサージをするアロママッサージなどがあります。これらも、香りを嗅覚で感じますから、芳香浴を兼ねています。

精油の使用法には注意が必要です

精油の選び方と合わせて、使用法についてもアドバイスを受けましょう。精油は植物成分をいろいろな方法で(主に水蒸気蒸留法)抽出した「原液」です。たとえば薔薇の精油1滴を作るには、およそ40輪の薔薇が必要だそうです。アロマバスや足浴では原液を数滴たらしますが、マッサージでは皮膚に浸透しやすく、刺激を少なくするために、ベースオイルで薄めて使います。ベースオイルには、ホホバオイル、アーモンドオイル、マカデミアナッツオイル、グレープシードなどがあります。

不妊カウンセラーよりのコメント

今回はアロマテラピーの基礎知識についてお話ししました。アロマテラピーは代替医療のひとつということです。代替医療の根底にあるのは、私たち人間を体と心を含めてまるごとに全体として受け止める考えと理解していただければ幸いです。次号では、主な精油の種類や期待できる効果、とくに不妊症の方がアロマテラピーを行う際の注意などについて取り上げていきます。
なお、当院では、ほぼ1か月に1回のペースで、アロマコンサルテーションを開いています。開設は1999年なので、もう10年続いています。コンサルタントは西山万里さんです。不妊治療を受けてみえる方に、西洋医学の治療を受ける主体である心身の基礎的な体力、健康を培っていただくことと共に、合わせて妊娠後、さらにはご出産後の育児に備えての体力づくりなど長い視点でのコンサルテーションメニューを作っていますので、アロマテラピーはもちろん、東洋医学についてお知りになりたい方は、どうぞ、お気軽に教室をのぞいてみてください。
不妊カウンセラー 西山純江

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