一般不妊治療・体外受精・顕微授精 西山産婦人科不妊治療センター

院長 西山幸江(生殖医療専門医・臨床遺伝専門医)
名誉院長 西山幸男(生殖医療専門医)

NEW INFOMATION OF INFERTILITY

クリニック便り

2009年夏号

テーマ 妊娠しやすい生活習慣・代替療法について No.1

前号までは遺伝や受精をテーマに臨床的な医療現場でのお話をいたしました。
今回からは、医療サイドに加えて、患者様の身体的内面にも視点をおき、妊娠しやすい体を考えてみたいと思います。医療の発展は目覚しいものがありますが、結果はすべて良いものとは限りません。各施設で最新の技術をもってしてもかなわないことがあります。人間の体は本当にデリケートです。

今回はテーマにあげましたように、毎日の生活に目を向けて生活習慣を考えると共に不妊治療の医療的効果を補完する代替医療についてお話を進めたいと思います。病院で受ける西洋医学の治療と合わせて、代替医療や生活法が「妊娠しやすい体作り」にかかわり、治療の効果をあげることになると思います。

からだ全体を健康にする生活習慣を

妊娠しやすい生活習慣といっても特別な秘訣があるわけではありません。基本は栄養バランスのとれた食事、適度な運動、心身のストレス解消等をできるだけ自分なりに心がけて行うということです。

栄養バランスのとれた食事

栄養バランスのとれた食事は、血行促進や冷え性の改善に役立ちます。 植物エストロゲンなどを含む食品はホルモンの活性化に貢献します。 また体の免疫力を高めてくれます。栄養の「バランス」とは具体的に説明するまでもないことですが、食事を通して健康な体を考えるということです。野菜だけ、お肉や魚ばかり、あるいは好きな食品中心という偏った食事にならないように、ご飯、魚、肉類、緑黄色野菜、淡色野菜、海藻類、きのこなどをはじめ、季節の果物も含め身近な素材を生かして食事を作り、食べてください。メニューは和食・洋食・中華何でもOKです。楽しみながらお料理してください。食べ方は腹八分目を心がけます。食事によって体は健康な細胞を作ります。 細胞は活性化し少しずつ効果が出てくるはずです。

私たちの体は、たくさんの細胞からできています。卵子・精子は生殖細胞です。女性の場合は卵巣・卵管・子宮・膣、男性の場合は精巣・精巣上体・輸精管・陰茎が生殖器官ですが、これらの生殖器官を作っているのが細胞です。
そして、細胞を活性化するのは、私たちが毎日食べる食事からとる「栄養」です。つまり、生殖器官の働きを活発にして、卵巣や精巣で元気な卵子と精子が作られ、妊娠しやすい体になるには、日々の食事内容がとても大切ということなのです。「これを食べれば絶対に妊娠しやすくなる」という特別な食品や栄養素があるわけではありませんが、ビタミンB群を含む豚肉、魚の鮭、体を温める作用をもつ土の中で育つ野菜などを始め、血液をサラサラにする働きに関与している食品(:たまねぎ)、生殖機能への効果が期待できるイソフラボン(:植物エストロゲン)を含む食品(:大豆、大豆製品など)等は見逃せません。また、生殖にとても関与があるビタミンEを多く含むアボガドも最近価格的にも求めやすくなりました。

適度な運動

適度な運動は血行をよくして生殖細胞である卵子や精子に栄養と酸素を運んでくれます。女性の場合、生殖細胞である卵子は卵巣で作られます。卵巣は子宮の左右から出ている細い管である卵管の先にあります。かなり体の奥深くにあるといっていいでしょう。卵子の成熟には日々の食事から得る栄養が大切な「糧」になります。では卵巣へ栄養や酸素を運ぶのは何でしょう? 血液ですね。同様に精子を作る精巣に栄養と酸素を運ぶのも血液です。 血液の流れがよいと、体の奥にある卵巣にも栄養と酸素が十分に届きます。 適度な運動は体のすみずみまで血行がよくなる手助けをします。

心身のストレス解消

疲労をためず、心身のストレスを早めに解消する規則正しい生活リズムが、元気な体を作ります。 生活リズムが不規則になって睡眠不足が続くと、風邪をひきやすくなることは日常生活でよく経験します。体が疲労すると、体全体の免疫の働きが低下して、風邪ウイルスをはね返す力が弱くなるからですね。
不妊治療の場合も同じことがいえます。心身のストレスは細胞にダメージを与える酸化物質を増やします。疲労も精神的な不安や苛立ちもストレスになります。十分な睡眠で体をいたわり、今日のストレスは今日のうちに解消して明日に持ち越さない…。そんな規則正しい生活リズムが妊娠しやすい体を作ります。 自分だけで悩まず、気分を変えられる方法を見つけて、ストレス解消をするようにしたいものです。

代替医療とは

代替医療は、西洋医学に属さないさまざまな療法を言います。日本補完代替医療学会では、補完代替医療を「現代西洋医学領域において、科学的未検証および臨床未応用の医学・医療体系の総称」と定義した上で、「しかし、なかには現代西洋医学と同等かあるいはそれを凌駕する医療が存在する以上、当学会は alternative medicine(代替医学)という用語を用いることとしました」としています(日本補完代替医療学会HPより)。代替医療には、インドや中国に古来よりある気功やヨガ、東洋医学の漢方薬や鍼灸の他、自己治癒力を賦活化させるホメオパシス、西洋の漢方療法ともいえるレメディー、植物療法であるアロマセラピーなどが含まれますが、皆さんに理解いただくために、下記のように分類してみました。

  • 伝統医学:気功、ヨガ、漢方薬、鍼灸など。
  • 自然療法:ホメオパシス、レメディー、アロマセラピーなど。
  • 食事療法:自然食療法、栄養補助療法など。
  • 運動療法:太極拳、整体など。
  • 心理療法:カウンセリング療法、自律訓練法、イメージ療法、音楽療法、笑い療法など。
快適であることが代替医療の基本です。

たとえば太極拳がいいらしい、ヨガがいいらしいと思っても、どうも積極的にやる気にならないということがあります。鍼灸がよいと聞くけれど、「針」は苦手という方もいるでしょう。世間的にいいとされている治療法や健康法であっても、ご自分が好きなこと、無理せずに実行できることが大切です。「快適」であること、「心地よい」ことが基本です。

深い呼吸法が心身の調整につながります。

中国の伝統的な健康法である気功、太極拳や、古くはインドを発祥の地とするヨガなどの基本は、深い呼吸法を身につけることといえます。日本にも丹田呼吸法や野口整体など深い腹式呼吸で体を調整する健康法があります。これらの健康法は体だけでなく精神的な安定感を得ることができ、心身の調整につながります。

カウンセリングによるストレス解消

不妊治療中には、「いつ妊娠できるのだろうか」という不安がつきまとうものです。ご主人との間に治療に対する姿勢や熱意の温度差がある場合もあります。家族からのプレッシャーや仕事との兼ね合い、あるいは治療法についての疑問など、さまざまにストレスを抱えておいでの方が多いものです。心に秘めた不安はできるだけ早く解消したいものです。最近ではカウンセリングの必要性が多方面から求められています。体についての悩みだけでなく心の中にある悩みも、資格を持ったカウンセラーのカウンセリングを受けることは、ストレス解消の大きな手助けになります。

冷え性の方にお勧めしたいアロマセラピー

不妊に悩む方には冷え性が多く見受けられます。冷え性は血行不順から起こっていることが多く、女性だけでなく、男性にもあります。血行促進を促す運動療法はもちろんですが、アロマセラピーによる足浴も効果的です。
アロマセラピーは植物から抽出した精油による芳香療法のことです。心身のリラックスに向くラベンダーや元気の出るローズマリーなどいろいろあり、体質や体調によって使い分けます。
アロマセラピーは室内に香りを漂わせる芳香療法を基本とし、手浴、足浴、入浴などがあります。少し熱めのお湯に精油を数滴たらし、足をひたすのが足浴です。

自己流は控えましょう。

漢方薬には市販の製剤が多数ありますが、漢方薬も「薬」である以上、正しく使うことが大切です。同様に、アロマセラピーの精油にはそれぞれに作用が違います。漢方薬は医師の処方を受けて使いましょう。アロマセラピーも専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。栄養補助療法のなかには、特定の栄養素の購入を強く勧められるケースもあります。自己流で行うのではなく、ぜひ、医療スタッフのアドバイスを受けながら、ご自分に合う方法にチャレンジしていただきたいと思います。

第8回 NPO法人日本カウンセリング学会 参加日誌

ユーカリプタスで新型インフルエンザの予防を心がけましょう。
この原稿がサイト上にアップする頃には、新型インフルエンザが大流行しているのでは…と心配でたまりません。一方、体に基礎的な免疫能がある方は感染しても軽症で済む可能性があります。栄養バランスの良い食事、季節に応じた旬の食材の多用は免疫能アップにつながります。合わせて、当院アロマテラピー教室の講師によると、ウイルスの感染予防や喉の痛みなどの初期症状の軽減には、ユーカリプタスというエッセンシャルオイルが有効とのことです。使い方はモーニングカップにお湯を入れ、数滴オイルを垂らして室内に香りを。あるいはハンカチやマスクに数滴落として鼻や喉にあてます。実際にお使いになる際にはぜひ、アロマテラピストのアドバイスを受けるようにお勧めします。

不妊カウンセラー 西山純江

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