一般不妊治療・体外受精・顕微授精 西山産婦人科不妊治療センター

院長 西山幸江(生殖医療専門医・臨床遺伝専門医)
名誉院長 西山幸男(生殖医療専門医)

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2007年秋号

テーマ不思議がいっぱい!受精と着床の仕組み Part.1 命の芽「受精卵」ができるプロセス

妊娠への第一歩は、卵子と精子が受精し、受精卵となった新しい生命体が子宮内に着床することから始まります。秋号からは、命の芽を創る「受精と着床の仕組み」について、最新の研究成果を交えて連載3回の予定でお話ししていきます。
連載1回目の今月は、命の芽「受精卵」ができるプロセスです。

卵子の構造

子は女性の卵巣で作られる生殖細胞です。私たち人間の体は多細胞生物といわれるように、約270種類、60兆個という膨大な数の細胞でできていますが、卵子はこれらの細胞の中でもっとも大きい細胞といわれています(直径およそ0.15mm)。

卵子の形は球形です。細胞膜で包まれた中には卵細胞と極体があり、外側は透明帯というゼリー状の膜で覆われています。卵細胞には核と細胞質があって、核には母方の遺伝子情報を受精卵に伝える染色体があります。

あとで詳しく説明しますが、透明帯は、精子が卵子の中に進入しようとするときに大変重要な働きをしています。

精子の構造

精子は男性の精巣で作られる生殖細胞です。長さは約0.05mmで、頭部・中間部(中片部)・尾部から成り立っていますが、丸い頭と細くて長い尾をもっているので、おたまじゃくしの形によく似ています。

頭部にある精子核には、受精卵に父方の遺伝子情報を伝える染色体が詰まっています。また、頭部の一番先端には、卵子に進入するときに必要な酵素を分泌する先体(せんたい)があります。これもあとで説明しますが、「先体反応」といって、先体が正しく働くことで、精子は卵子の透明帯を通過し、さらには卵細胞の細胞膜表面に穴を開けて中に入ることができます。

卵子の透明帯と精子の先体は、受精の最初の段階で大変重要な役割を果たしているわけです。

受精のプロセス

受精とは、卵子細胞と精子細胞が融合して、新しい細胞−受精卵が発生する現象です。
受精は

  1. 精子が卵子の外側にある透明帯に進入する。
  2. 精子が透明帯の奥にある卵子の細胞膜に穴を開けて中の細胞質に進入する。
  3. 卵細胞質内に入った精子と卵子の核が融合し、新しい遺伝子をもった新しい生命体—受精卵になる。

そのプロセスにはいくつもの不思議が積み重なっています。

●精子の透明帯通過と先体反応

精子頭部には先体があるといいました。この先体の表面には糖タンパク質(タンパク質に糖鎖が結合したもの)がくっついています。この糖タンパク質は精子が腟から子宮の中へ、さらに卵管を泳いで卵子に到達するまでの間、精子、とくに精子頭部にある遺伝子情報に傷がつかないように守る「ヘルメット」の役割を果たしているそうです。ところが精子が卵子の透明帯の周りに到着すると、この糖タンパク質はなぜかなくなります。「ゴールに着いた!」とヘルメットを脱ぎ、かわりに透明帯を溶かして進入口を作る酵素を産生・分泌し始めるのです。これを精子の「先体反応」といいます。

●精子の先体反応をリードする卵子透明帯の働き

卵子の外側を覆う透明帯には、精子に働きかけて精子の先体反応を引き起こす力があると言われています。そして、この先体反応によってヘルメットを脱いだ精子だけが卵子と合体できます。 体内で起こる自然受精の場合、卵子の周囲には数百匹の精子がたどり着きます。その中の1匹だけが卵子との融合を許される訳ですが、融合のきっかけをリードするのは卵子透明帯、つまり女性のほうとも言えそうですね?!

●精子の卵子細胞膜への進入

卵子透明帯に進入した精子は、今度は卵細胞を包む細胞膜に穴を開けて入り込まないといけません。このときに活躍するのが「Izumo」というタンパク質です。Izumoって出雲のこと?・・ そうです。卵子との融合に不可欠なこのタンパク質を発見したのは日本の科学者です。縁結びの神様である出雲大社にちなんでIzumoとネーミングされたのです。ちなみに、2005年のこの発見は、受精の際、精子と卵子の細胞膜融合に不可欠な精子タンパク質としては世界初の発見です!

●正常受精卵を作る透明帯の働き

精子が1匹、透明帯を通過して細胞質内に進入すると、何と透明帯は開いていた穴を閉じてしまいます。なぜでしょう?1匹以上の精子が進入した受精卵は育つことができません(多精子受精卵)。透明帯には、複数の精子が卵子に受精するのを防ぐ非常に賢い能力が備わっているのです。

受精卵の発育と着床

前号までの遺伝子のお話で説明したように、卵子と精子は減数分裂をする生殖細胞ですから、それぞれに22個の常染色体と1個の性染色体をもっています。受精によって22対44個の常染色体と2個の性染色体をもつ細胞に変化した受精卵は、すぐに細胞分裂を始めます。 この初期分裂段階の受精卵を分割卵といいます。 たとえば、2分割卵・4分割卵は、2細胞または4細胞まで細胞が分裂して増えた受精卵のことですし、桑実胚(桑実胚)は16細胞まで分割した受精卵のことをいい、胚盤胞(はいばんほう)は桑実胚よりさらに発育が進み、ちょうど子宮内膜に着床する段階まで発育が進んだ受精卵のことです。

次号では受精卵の発育についてもう少し詳しく説明しながら、着床のメカニズムについてお話ししたいと思います。

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